//我輩も猫である//

vol.002

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■犬などはかわいそうに、いろいろな義務を負わされている。
番犬の役目をおおせつかったり、犬ゾリのようなひどく重い物を引かされたり、盲導犬として働いたり、猟犬として人間が他の動物をハント("hunt")する手伝いをさせられたりする。
だが人間は、猫にはこういうことをさせようとはしない。
その点、猫にはネズミを捕ること以外、何も期待しないから、正に自由そのものだ。
このネズミ捕りも、今では、人間も期待しなくなって、たまにネズミを捕ってくると、女の子は「キャッ!」と言って気持ち悪がり、人間の方でも捕ったネズミの始末に困るぐらいで、決して喜んではもらえないのである。

■猫には誰も「お手!」とか「お座り!」などとはやらないもので、犬などのように特別な訓練所などに入れて、人間の命令に従うようにトレーニングをしたりはしない。猫訓練所など聞いたこともなければ、またいくら探してみても、そんなものどこにも存在しないのだ。"Cats don't have to do these stupid things like most dogs do." 「お手!」などのような「ばかげたこと」は、猫ならやらなくてもいいのである。

■しかし、飼い主に捨てられると大変である。"If you get dumped, then you become a homeless cat." 捨てられたらホームレスになるわけだから。
アメリカには、今では、750万人のホームレス(人間様の)がいるという。
日本には2 ̄3万人しかいないから、日本と較べるとアメリカはひどい所で、日本の数百倍もいるのである。
リストラ( "restructuring"= 首切りと同じこと)やダウンサイジング( "downsizing" 切り詰めること、小型化すること)が行われ、レイオフ("layoff" 一時解雇と呼ばれ、人手を会社が必要とすれば再雇用されるというのが前提だが、そのままレイオフされっぱなしになることが多い)される人が沢山出てきて、ホームレスになる人もいるわけである。
だから、アメリカでは、ここ二、三十年間は、一握りの金持ちを除いては、皆、ビクビクしながら生活しているのである。
日本でも、最近は、リストラが流行っているから、昔と較べればサラリーマンも大変だが、アメリカと較べれば、日本のほうが数倍安定した国なのだ。

■私もホームレスになったので、途端に、三度のメシ(猫は一日二食なのだが)を自己調達しなければならない破目になったのであった。今さら、昔の猫のように、あの薄汚いネズミなどを捕って生活などできるわけがない。ネズミは不潔だし、恐ろしい。小さい奴なら、いたぶりながら遊ぶこともできるが、スラム街やゴミの多いところにいる奴らときたら、いつも腹いっぱい食っているから、ぶくぶく太って、人間の赤ん坊でも食い殺すほど残忍な奴らだ。大きいのになると、われわれ猫よりも大きいのもいる。ピストルでも持っていなければ、こっちの方が危ないくらいだ。

■キャットナップ氏には、子猫のときからけっこう美味い物を食わしてもらい、この国の仏教の坊主のように「山寺の和尚さんは、鞠は蹴りたし、鞠は無し、猫をかん袋(紙袋)に押し込んで、ポンと蹴りゃ、ニャンと鳴く(泣く?). . .」などとやられたこともない。まあ優遇されていたのだから、今さら恨みがましいことを言うつもりはない。しかし、毎日のメシの確保をしなければならなくなった。まあ、住居の方は、雨露をしのぐ場所はどこにでもあるから、メシの確保と較べれば、別に大きな問題ではない。ただ、柔らかいソファーや暖かいベッドに寝るというわけにはいかないだけである。目下の所、夏だから、寒くなるまでには、まだ時間がある。

■キャットナップ氏には、子猫のときからけっこう美味い物を食わしてもらい、この国の仏教の坊主のように「山寺の和尚さんは、鞠は蹴りたし、鞠は無し、猫をかん袋(紙袋)に押し込んで、ポンと蹴りゃ、ニャンと鳴く(泣く?). . .」などとやられたこともない。まあ優遇されていたのだから、今さら恨みがましいことを言うつもりはない。しかし、毎日のメシの確保をしなければならなくなった。まあ、住居の方は、雨露をしのぐ場所はどこにでもあるから、メシの確保と較べれば、別に大きな問題ではない。ただ、柔らかいソファーや暖かいベッドに寝るというわけにはいかないだけである。目下の所、夏だから、寒くなるまでには、まだ時間がある。

■浪人というのは、この国の江戸時代に、大した仕事をしなくても、御主人様(殿様と呼ぶらしいが)に三度のメシを食わせてもらっていたサムライが、急に殿様が領地を失って破産したり、何かの落ち度が見つかって殿様に首を切られたりした者のことで、私と同じように、開放され自由の身にはなったが、給料がもらえない境遇に落ち、主人なしではメシが食えない悲しい身分の人たちなのである。本来は「浮浪人」の意味で「牢人」とも書いたというぐらいだから、正にアメリカの奴隷的境遇にある人たちである。これから抜け出す唯一の方法は、新たに「主取り」をすることである。猫とて同様、新しい御主人様(アメリカでは、奴隷の所有者のことを、奴隷に "マスターMaster" と呼ばせていたが、日本のバーやレストラン・喫茶店のマスターとは大違いで、殺生与奪権の持ち主だから「偉い人」で)を探さざるを得なくなったのである。

■"As I said before, us cats are different from dogs." 前にも言ったように、猫は犬とは違うのである。何も建設的な("productive" は「生産的な、利益を生ずる」などと訳されているが、あまりいい訳がないようだ)ことをしなくてもメシにありつける特権を猫はもっている。犬のように「ドロボー除けの警報機」の仕事をしたり、動物殺しの手伝い(猟犬として)をしたり、麻薬中毒にさせられて麻薬捜査("narcotic investigation")の片棒を担がせられたり、雪ゾリを引いたり、盲導犬になったり、警察犬をやったり、飼い主に愛嬌を振りまいたり、そういうことをしないとメシにありつけないのとは違うのである。

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