我が英語渡世

第二章 ニューヨークの素敵な仲間たち

19-黒人はみな同じ顔をしているという白人警官

*-*-*-*-*-*-*-*

 日本のI社に勤務していた頃は、同僚の大下氏、根岸氏と一緒のアパートに住んでいた。八十九丁目の通りのレキシントン街と三番街の安いアパートだったが、この辺はハーレムのはじまる地域で、スパニッシュ・ハーレム(プエルトリコ系の人たちが多く住む)の入口にあたる場所だ。大下氏はすでに帰国し、根岸氏も日本から家族が来たので引越していったあと、私一人で住んでいたのだが、ここで二回強盗に会った。

 二回とも黒人の少年(十六歳ぐらい)に背中へナイフをつきつけられて、有り金全部をまきあげられた。まあ有り金を全部といっても、一回に二十ドル前後だから被害は微々たるものだったが、あとで腹が立って仕方がなかった。ナイフをつきつけて強奪することをアームド・ラバリー(武器を持ってする強盗)と呼ぶ。このアームド・ラバリーでつかまるとかなり刑も重いのだが、当時、年がら年中起きていたので、日本のように新聞のニュースになることはなかった。

 最初にやられたのは夕方六時頃で、近くのスーパーで買い物をし、アパートのビルの外側のドアをカギで開け、内側のドアを開けたとたんに、うしろからさっと黒人のガキが入ってきて、私の背中にナイフをつきつけ、

「ヘイ、ミスター」

 と呼ぶ。その瞬間に「やられた!」と思ったがあとのまつり。仕方がないので、ポケットに入っていた二十ドルなにがしを出して、

「出て行け!」

 と言った。とにかく、ショッピング・バッグの一番上に入れてあるタマゴが割れやしないかということだけが心配だった。取られた二十ドルよりもタマゴの方が心配だったのだから、今考えてみてもこっけいである。

 相手が少年だったので、恐いとは思わなかったが、自分のアパートヘ帰って、買い物をテーブルの上に置いたとたん、怒りがこみ上げてきて、電話で警官を呼んだ。

 五分もしないうちに、バトロール中の白人警官二人がやってきた。一人は私のアパートヘ入るとすぐに居間のテーブルにあった最新のプレイボーイ誌を目ざとく見つけ、それを読みはじめ、もう一人の警官はダイニング・テーブルに腰掛けて、黒い手帳を開いて、「どうしたんですか?」と質問しはじめた。

 私が一部始終を説明し始めて、相手が黒人の少年だと言うと、とたんに、手帳をしめてポケットにしまい、タバコをとりだして、火をつけ一服してから、おもむろに、

「おわかりかと思うのですが、黒人というのはみんな同じ顔をしていましてね……」

 と言う。

「もし、その辺を探したいのでしたら、パトカーで一緒に見まわってもいい」

 と言う。では犯人を探そうということになり、その辺を二回ほどパトカーで回ってみたが、犯人がその辺でうろちょろしているわけがない。警官たちも別にケガをしたわけでもなく、生命に別状ないのだからあきらめろと言う。

 当時は、白人警官の黒人に対する残虐行為がマスコミで取り上げられ、社会的な問題になっていた時期だから、白人の警官たちは黒人の犯罪には神経過敏になっていた。だから黒人にはできるだけかかわりあいになりたくなかったのだろう。

 半年もしないうちに、再度同じ目に会った時は、警官に、

「黒人はみんな同じ顔をしている」と言いたいのだろう、と言うと、

「まさにそうだ」と言う。

「まったく見分けがつきません」と。

Novel Index Back Next

*-*-*-*-*-*-*

トップページへ 新着ニュース
メルマガ 英語コラム
英語教材 発音教室
英語上達の秘訣
その他  お支払いについて
会社案内  地図
商取引法表示 E-mail
サイトマップ PCサイト

Copyright (C) 2006 Sugis English. All Rights Reserved.