英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.11
著者 杉本 宣昭 
第一章 ニューヨークは第二の故郷(ふるさと)
9- 年齢(とし)と競争の広告マン
 広告代理店は専門家集団だから、未経験者の場所はない。経験が必要な業界だから、新卒の未経験者はお呼びでないのである。年齢も二十五歳以下の人は少ない。二十代後半から三十代前半の人が最も多い。しかし、広告マンにとって自分の年齢ほど重要なものはなく、三十歳代で、トップ・マネジメントの一員になれないなら、スポンサー側に行くか、他の業界に早目に移った方がよい。

 年齢的に特に厳しい分野は、コピー・ライターの仕事といってよいだろう。コピー・ライターは三十代後半になると、もうそろそろおしまいになる。四十歳を越すともうダメだ。首になっても次に行くところがなくなってくる。五十歳代のコピー・ライターなどはほとんどいないのだ。給料も三十代前半が最高で、この時期に高い地位を確保しておかないと、遅かれ早かれ都落ちのうきめ(、、、)にあう。

 ここに書いたような話は、ニューヨークの一流広告代理店の話だから、地方へ行くと、ニューヨークでは望みのない者でも、かなりの年齢までは働ける。しかし、一たん地方に行くと、二度とニューヨークの広告業界にはもどれないのである。少なくとも我々は当時そう思っていたし、ニューヨークを二、三年離れると、もとのニューヨークの感覚にもどれない。特にコピー・ライターがそうであった。

 コピー・ライターはただ単に文のたつ人というだけでは不十分で、マーケティングを理解していなければならない。広告コピーは派手なヘッド・ラインだけではない。ヘッド・コピーとボディー・コピーの両方を書かなければならない。しかも、ハード・セル広告が多いから、しっかりセールス・ポイントをつかみ、理路整然とコピーを展開させる必要がある。ロジックのみが武器といってもよいぐらいである。

 アート・ディレクターの仕事に関して、ここでは簡単に説明しておこう。ヴィジュアリゼイション(目に見えるようにすること)が彼の仕事である。だから絵を描く能力は小学校一年生程度でも、相手がわかってくれさえすればOKなのだ。コピー・ライターに較らべればアート・ディレクターの方が広告界業での寿命が多少長いと言える。外部の人間関係という蓄積がかなりものをいうから、この点ではプロデューサーも同様に寿命は多少長い分野だろう。

 広告業界に長く居れる職業はプルーフ・リーダーやプロダクション・マン、版下制作者やフィニッシュ(完成した絵を描く)・アーティスト、メディア・バイヤー(媒体の買い専門家)、リサーチ・マンなどのように特殊技術を持っている連中で、しかも経験があればあるほど有利という分野である。

 コピー・ライターの次に年齢(とし)が問題となるのはAE(Account Executive)である。日本では営業部員と呼ぶが、別に営業=セールスをするわけではない。お客様と直接コンタクトする部門だから営業と呼ぶのもおかしくはないが、昔は広告は取って歩くもの、セールスをすることが広告代理業の仕事、媒体の代理店的な役割りを果たしていたから「営業」と呼ばれるようになったのだろうか。

 英語では、アカウント・サービスと呼ばれ、セールスの意味あいを一切含まない。お客(スポンサー)のことをクライアント(依頼人)と呼び、弁護士の依頼人(弁護をする相手)と同じ呼び名「クライアント」を使う。コンサルタントのお客もクライアントである。だから、売るのは諸々のサービスである。


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