広告代理店の収入は日本と同じように、媒体からのコミッションで、他の業界ではリベートとかキック・バックなどと呼ばれるものと同じである。主な報酬はこの媒体からのコミッションで、相場は大体十五パーセントに決まっている。
もう一つの収入源は広告、コマーシャルの制作費からのものである。日本のように制作費の中に代理店マージンを入れることはない。原価をはっきり明示する。その上に十五パーセントのコミッションをかけてクライアントに請求する。この十五パーセントが代理店のもう一つの収入になる。日本ではコピー・ライティング料を請求する代理店もあるが、請求しなくても制作費の中に入っている場合が多い。日本では外部のクリエイティヴ・ハウスを使う場合が多いから、コピー・ライティング料も制作費の中に当然含まれるのである。
しかし、アメリカの代理店ではコピーは最大の商品であるが、これは媒体から十五パーセントのコミッションを得る権利の根拠みたいなものだから、コピー料などはクライアントに請求しない。アート・デイレクション料も同様である。外部のクリエイティヴ・ハウスを使うような代理店は、全機能をそなえた広告代理店とは言えないのである。
少々脱線したので、アカウント・サービスの説明にもどることにする。広告代理店のAEはクライアント側のブランド・マネジャー、プロダクト・マネジャー、場合によっては宣伝担当副社長と同格である。プロダクト・マネジャーはプロフィット・センター(利益を生みだす全体計画の立案実行の中心的人物)の役割をになうマーケティング・マンであり、広告・販売促進・PR・リサーチなどの製造・販売以外の分野に対して、責任を取らなければならない立場にある。
AEはプロダクト・マネジャーのカウンター・パート(相手側の同資格者という意味)だから、マーケティングのプロでなければならない。いや、能力的には、プロダクト・マネジャーと同等で当り前、それ以上の能力がなければ、クライアントにとって大して役に立たないと言ってもいい。
プロダクト・マネジャーはある時期まで、ブランド・マネジャーと呼ばれていたが、現在ではこのタイトルはあまり使わない。P&G社(プロクター・アンド・ギャンブル社)のプロダクト・マネジャーたちは大変な売れっ子で、広告代理店に引き抜かれると、月給は最低でも倍になる。
プロダクト・マネジャーを何人かたばねる人をグループ・プロダクト・マネジャーと呼び、このカウンター・パートが代理店ではアカウント・スーパーバイザー(AS)と呼ばれ、何人かのAEをたばねている。ASには副社長のタイトルが与えられる場合が多い。
AEの場合も四十歳ぐらいになったら、少なくともアカウント・スーパーバイザーになっていないと、代理店には長く残れない。AEにも若さとクリエイティヴィティーが要求されるのである。AEも三十代後半になると、クライアント側のプロダクト・マネジャーや広告担当マネジャーや副社長に転出することを考えないと、失業の恐怖から解放されない。クライアント側に移ると、定年退職まで安定生活ができるからである。
AEとコピー・ライターが広告業界の花形で、代理店の社長・会長になる人はこの分野出身の人が多い。特にクリエイティヴィティー(独創性)を売りものにしている代理店の社長・会長はコピー・ライター出身が多い。
オーグルビー・メイザー社のデイビッド・オーグルビー会長やウェルズ・リッチ・アンド・グリーン社のマリー・ウェルズ女史などはコピー・ライター出身の代表的なトップである。マリー・ウェルズは当時最も急成長していた代理店の会長で、大変な美人ですばらしいコピー・ライターだった。