英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.20
著者 杉本 宣昭 
第二章 ニューヨークの素敵な仲間たち
ポケットに手を入れて通訳するとはけしからんと仕事をおろされる

IRM社をやめてからは、フリーランスのリサーチャーとなり、ジェトロの仕事や通訳などやるようになった。この頃、ジェトロの仕事でも一件につき百五十ドルなどという超極安の仕事がいくつかあった。これを処理するために担当者は頭をかかえていたのである。

 こんな安い仕事は誰も引き受けないから、私にやってくれと頼まれる。私の方も食わなければならないので、これらの仕事を引き受けることにした。だが、時々は二千ドル、三千ドルの仕事をくれるという条件である。

 ジェトロの仕事で一番楽しかったのは、国勢調査の資料集めだった。一九七〇年にアメリカの国勢調査が行なわれた。翌年は日本で国勢調査が行なわれるので、その参考としてワシントンのセンサス・ビューローヘ行って、資料や裏話の取材をしてくる仕事である。

 二千ドルぐらいの仕事で、経費を差し引いても手取り千五百ドルにはなったから大変効率のよい仕事だった。浮浪者たちをどう調査するかなどの面白い裏話も聞けたりし、簡単な仕事で千五百ドルになるのは大変ありがたかった。

 通訳の仕事も、この時期かなりやった。日本の不動産業界の視察団がニューヨークにやってきた時の話である。第一日目を終えたあと、急に仕事をおろされたので、その理由を旅行代理店に聞くと、団長の某最大手不動産会社の専務が、私の態度が気にくわないので他の通訳にかえろといったと言う。「ポケットに手を入れて通訳をするとは言語道断だ」といわれたのだそうだ。

 白人の通訳が手をポケットに入れようがどうしようが、その人には気にならないかも知れないが、日本人の場合は別で、「なまいきな奴だ」ということになったのだ。日本人はどこへ行っても日本人だ。アメリカにいるといって、アメリカ人と同じ態度を取るのはけしからんということなのか。

 日本人はどこへ行っても、相手が日本人だとわかると、自分たちと同じ価値観を持っているはずだと錯覚する。というよりも、日本人は全員同じ価値観、宗教、主義主張を持つべきだと思っている人が多い。こういう人の前に、違った価値観や文化を持った日本人(小さい時から外国で育った人)があらわれると大変なことになる。

 二世や三世ならまだあきらめられるが、日本出身だというと「けしからん」ということになる。外国に長くいると、自然に物の考え方や態度が変わってくるのは当り前。「カメレオンのように態度をコロコロ変えられるか」といいたくなるのも、また人情というものである。

 逆に日本人の行動も、外国でみるとひどいものが多い。同じ日本人だと思われたくないと思ったことが何度もある。一流レストランで「くちゃくちゃ」と音をたてて食べる奴、一流日本料理屋で「おい、おねえちゃん」と大声を出す下種(げす)野郎、団体で女郎買いする色気狂い、ポルノ雑誌を買いあさる奴、ホテルの廊下をステテコで歩きまわる奴。こういう連中と同じ日本人と思われるのもかなわないのである。


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