英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.25
著者 杉本 宣昭 
第三章 セールス、セールス、セールス
セールスマンは学生にとって最高のアルバイト

ハワイ大学留学中にやったアルバイトの中で、最も勉強になり、収入もよかったのがセールスマンの仕事である。この仕事での苦労とその成果は、今でも忘れることが出来ない。

 セールスにはいろいろな形態があり、一口にセールスマンといっても、その種類は多様である。ルート・セールスマン(食品メーカーなどのセールスマンで小売店を回り受注活動をする)もいれば、セールス・エンジニアー(機械類の販売にたずさわっているエンジニアー)や小売店の売子もいる。

 セールスマンといえば、日本では訪問販売員のことがまず頭に浮かぶ。訪問販売とは英語でいうと「ドア・トウ・ドア・セリング」(戸別訪問し、まさにドアからドアへと売り歩く方法)とか「パーソナル・セリング」(個人の販売能力による対面販売方法)などのことである。訪問販売をネガティブな点から見ると、「ハイ・プレッシャー・セリング」とも別称され、お客にハイ・プレッシャーをかけて、押し売り的に商品を売りつけるセールスマンのことをハイ・プレッシャー・セールスマンと呼ぶ。

 日本語で押し売りというと、ムショ帰りと称して「俺はついこの間、刑務所を出てきたばかりで、生活に困っている。奥さん、ゴムひもを何本でもいいから買ってくれ」といい、買うまでは玄関先から離れないというような悪いイメージだが、こういう輩(やから)は極端なハイ・プレッシャー・セールスマンといえる。

 私は「パーソナル・セリング」と呼ぶ方を好む。会社が大きいとか、商品が宣伝されているとか、他の要素によってセールスがなりたつのではなく、あくまでもセールスマン個人の能力で売るのが本当のセールスマン(自分の腕一本で食べて行く男や女)だと思うからである。

 訪問販売の商品は、マージン幅さえ大きければ何んでもよいというわけではない。セールスマンのコミッションが収入として魅力的な金額でなければならない。コミッション収入が、通常のサラリー収入の最低でも二倍や三倍にならなければ、まったく魅力がない。難しい、人のいやがるセールスの技術を身につけて働くのだから、普通の仕事では入手できない収入が得られなければ、訪問販売のセールスマンになり手はない。

 訪問販売商品でポピュラーな物は百科辞典、高級食器セットなどであった。私も百科辞典のセールスから始めて、八ミリ映写機セットを売り、最後はアルミ製の屋根を売った。

 誰にでもできるというものではないのが、セールスマンの仕事である。留学生なら、まず英語がある程度達者でなければならない。だが、英語がしゃべれればセールスマンになって十分に稼げるかというと、そうもいかない。セールスにはそれなりのコツがあり、それを習得するには、セールス・テクニックを覚える必要もあるが、同時に、自己抑制力の養成をしないと、途中で一回挫折するとそれでおしまい、二度とセールス活動が出来なくなる。どうしてかというと、訪問先のドアをたたくのが恐くて恐くて仕方がないという状態になるからである。

 セールスの基本は、売り口上(日本の訪問販売業界ではセールス・トークと呼ぶが、英語ではセールス・ピッチと呼ぶ方が多い)を覚えることだが、商品によっては、これを丸暗記して、台本通りにしゃべれば、二、三人に一人は買ってくれると力説する「ワールド・ブック百科辞典」などもある。もっとも私の場合はあまりうまくいかなかった。

 ここでは、私の知っている優秀なセールスマン二人の話をご披露しよう。


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