英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.48
著者 杉本 宣昭 
第五章 ハワイ留学、英語とマーケティング修業
英語学校を免除されて始まった英語の苦労

 ハワイ大学は二年生の二学期(二月から始まる)へ編入することになった。英文学から経営学部へと専攻を変えたので、青山学院で取得した単位のうち合計四十三単位しか認められず、二年生の二学期へと逆もどりであった。

 留学生はほとんど全員、大学の科目を取り始める前に、ELI(英語学校English Language Institute)コースのうち、英語能力によっていくつかを強制的に取らされる。だから大抵の留学生は最初の学期はELIの授業だけしか受けられず、大学の授業は次の学期から取りはじめる。

 しかし、このELIは大学の正規の単位にはならないので、ELIの成績がいくら悪くても退学にはならないという利点がある。日本からの留学生の多くは、最初の一年をこの英語学校ですごす。だから大学の授業を受け始めるのは二年目からという人が多かった。

 入学の時に留学生はこのELIの試験を受けて、グレード別にクラス分けされる。しかし、留学生の中には今まで英語で教育を受けてきた人たちもいるので、試験の結果、ELIを免除される人たちもいる。ELIを免除になる人たちはシンガポール、フィジー諸島、西インド諸島などの出身で、訛りはあるが、英語が母国語か母国語並みに話せる人たちだった。

 幸運にも私は試験の結果、この人たちの仲間に入り、ELIを免除され、すぐに大学の単位を取り始めることになった。日本人では唯一人だった。高校時代から正しい英語の勉強をしてきたその成果である。

 しかし、これからが大変で、話すほうは全然問題なくても、読み書きでは単語力の不足が重くのしかかってきた。なんせ、毎日百頁以上の教科書を読んでいかないと間に合わない。頁ごとにいくつか知らない単語にお目にかかる。そうかといって、これらを全部辞書で引くわけにいかない。時間的に余裕がないのである。

 私は日本人留学生の中でもまだ読書スピードが速いほうであった。一頁五〜六分で読んでいたが、みんなは十分以上かかっていた。五〜六分でも百頁を読むには毎日十時間かかってしまう。一頁に十分以上をかけることは不可能だし、私だって一日十時間も教科書を読むことはできない。わからない単語はそのままにして、読みとばすのだから、内容をしっかりつかむことなどできない。時々は、英語のない世界へ行きたいなどと思ったものである。

 留学生はELIにいる間は楽だが、大学の単位を取り始めると大変だ。私の場合はすぐに大学の単位を取り始めたので、試験の多さと本を読む量の多さには閉口した。

 学生ビザを確保するにはフルタイム・スチューデントでなければならない。フルタイム・スチューデントとは、一学期に十二単位以上の単位数を取る学生のことで、パートタイム・スチューデントとは十二単位以下を取る学生のこと。市民権を持っている人や永住権を持っている人はパートタイム・スチューデントになれるが、留学生は勉強が本業だからフルタイムでなければならない。兵役の免除もこのフルタイム・スチューデントにしか与えられなかったから、女性は別にしても、アメリカ人の男子学生も留学生も十二単位取ることは必須だった。

 ほとんどの学科は一科目三単位、週に三時間の講義を受けるということで、一クラス九十分の授業が週二回ある。十二単位というと四科目取得することだから、週に九十分の授業を八回受けることになる。

 私は早く卒業したかったので、毎学期十五単位(五科目)を取ることにした。十五単位というとかなりきつい量で、地元の学生でも、アルバイトをする連中は十二単位しか取らない。

 アメリカの大学は試験の回数が大変多い。おまけに授業の進むスピードも速く、ちょっと手を抜くとあとで追いつくのに苦労する。だから毎日、日本の高校生が受験勉強に費やすぐらいの時間を予習・復習にかけなければならない。一日数時間勉強しなければ地元の学生でも良い成績が取れないのである。

 こういう風に書くと、あたかも私が毎日数時間勉強したごとくに聞えるから、ここで断わっておくが、彼等の半分も勉強したかどうか、今、振り返ってみても疑わしい。相変らず不勉強(ボンクラ)学生であった。まあ、日本の大学時代よりも勉強したという程度だから、成績のほうはあまりよくなかった。

 学科によっては一学期(約四カ月間)に五回も六回も試験がある。試験はエグザムと呼ばれ、中間試験と期末試験の二つがあり、これらの中間に短かい試験が二回ぐらいある。これらの短い試験はクイズと呼ばれ、試験の範囲は中間・期末試験よりも少ない。

 中間・期末試験は出題範囲が広く、一科目で教科書だけでも二百〜三百頁は読む必要がある。五科目取っていたわけだから、試験のたびに千頁から千五百頁分の教科書を勉強しなければならず、試験のたびに頭が痛くなる。知らない単語は沢山あるし、単語がわからなければ内容だってわからない。経済学・経営学などは専門用語を正しく把握しているかどうかを試験するわけだから、言葉をよく理解しなければ頭にも入らないということになる。

 普段から毎日数時間勉強していれば、試験の時にあわてないで済むのだろうが、親からの仕送りがない貧乏学生だから、アルバイトで生活費を稼がねばならない。したがって、勉強する時間が短かくなる。

 結果的には一夜漬けで良い成績などアメリカの大学では取れない。得意な科目以外は、及第点のCを取るのがやっということになる。


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