英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.50
著者 杉本 宣昭 
第五章 ハワイ留学、英語とマーケティング修業
アメリカは軍国主義の国―大学における予備役将校養成コース

 アメリカは今でもそうだが、軍事大国、軍国主義の国である。少なくとも日本人の目には、戦前の日本にまさるとも劣らないぐらい、非常に軍国主義的な国なのだ。こういうと、大多数の日本人には信じがたいかも知れないが、事実である。

 幼年学校、士官学校の数の多さは勿論のこと、高校・大学における軍事教練も盛んだし、今でこそ徴兵制度は廃止されているが、これの復活を望む声も高い。

 各大学にはROTCという予備役の将校を養成する正規の学科が設けられている。ROTCはReserved Officers Training Corps の略で、陸・海・空の三軍に分けられている。ハワイ大学では陸軍と空軍のROTCがあり、ハーバード大学などは海軍のROTCが有名で、故ケネディ大統領もここ出身の海軍士官であった。

 ROTCのコースを取るかどうかは、個人の自由選択で、大学の正規の科目以外に、必要な単位を取る。学科と教練とに分かれ、教練は軍からの配属将校や下士官からトレーニングを受ける。この単位を四年間取得して、最後の夏休みにブート・キャンプ(軍の特別訓練基地)で二、三カ月、ハード・トレーニングを受け、卒業と同時に現役の少尉に任官、三年間現役将校として勤務した後に予備役に編入される。そのまま何年でも現役の将校として勤務できるが、多くの人は三年間でシャバにもどってくる。そして初めて民間人として就職するのである。

 私の友人で同じ寮にいた日系三世の中村君などは大変真面目な学生で、ROTCを取っていて、卒業と同時に少尉に任官したが、ヴェトナム戦線へ自ら志願して行った。しかし、八カ月後には戦死の悲報に接することになった。当時の私は、ヴェトナム戦争のすぐ近くにいたのである。

 マノア・ヴァレーにあるハワイ大学の校庭は緑の芝生がきれいだった。マノアの谷に位置するこの大学は雨にめぐまれ、この谷にかかる虹は有名である。ROTCの学生たちは早朝に教練を行なう。

 小銃を肩にかついで、ズボンに士官候補生のしるしの幅広の黒い線の入った軍服を着て行進する彼等を見ていると、最初の頃は妙な気分になったものである。

 ROTCの学生たちには女子学生の応援団、今流にいうなら親衛隊がついていて、可愛いらしいユニフォームを着て、戦前の女子挺身隊のごとく、かいがいしく彼等の世話をやいている。私がアメリカ人だったら、多分、このROTCを取って軍隊に行っていただろうと思う。

 大学を卒業すると、兵役免除が解消される。だから、卒業と同時に徴兵の対象となる。大学を卒業しても兵隊になりたくない連中は、大学院に行く以外に手がないのである。しかし、成績がB平均=三・〇ポイント以上ないとなかなか入れないので、誰でも大学院へ行って徴兵免除になれるわけではない。

 ROTCを終了した連中は将校になれるが、そうでない人は大学を卒業していても召集されると、一兵卒の二等兵にしかなれない。そして、すぐにヴェトナムの最前線行きとなる。志願兵の兵役義務期間は三年間で、召集兵の場合は二年間と志願兵よりも一年短かい。この二年間、鉄砲玉に当らないで生きのびれば、満期除隊となり、第二次大戦のような全面戦争にならない限り、二度と軍隊にとられることはなくなる。

 しかし、この二年間を我慢できないやつは徴兵を拒否して、国外へ逃亡することになる。国を捨てるのである。当時、かなりの数の大卒者が国外逃亡をして、大きな社会問題になっていた。逃亡先はカナダや北欧の国々で、私の友人も一人逃亡した。カナダへ行くと手紙が来たきり、以後消息が知れない。

 今では恩赦的措置もとられたりして、帰国しても投獄されることはなくなったが、何年間かは政府の仕事をすることが義務づけられていると聞いている。


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