英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.51
著者 杉本 宣昭 
第五章 ハワイ留学、英語とマーケティング修業
いくら単位を取ってもC平均を取らないと卒業できないアメリカの大学

 アメリカの大学を卒業するには、卒業単位数を取得すれば卒業させてくれる日本の大学と違い(日本では可ばかりの成績でも卒業させてくれる)、C平均(良平均)を取らないと卒業させてくれない。だから卒業単位数を取ればよいというわけにはいかない。言い替えるなら、百二十八単位とかの卒業必須単位を取り終えても、全単位の平均点が二・〇ポイント以上にならないと卒業できないから、平均点が二・〇になるまで単位を取り続けなくてはならない。

 成績とはそれほど重要だった。日本人留学生の典型的パターンは、一年目はELIの授業がほとんどで、それらのクラスは卒業単位以外だから、いくら成績が悪くてもプロベーション(仮及第)にはならない。したがって、一年目は退学の心配はない。二年目になると大学の正規の授業を受け始める。最初の学期はC平均を取れなくて次の学期はプロベーションになり、この学期も成績が悪く前期・後期の両方を合わせて平均点がCにならないと、あえなく退学となる。そして帰国するか、一旦国外に出て、学生のビザを取りなおし、再度挑戦ということになる。

 当時の日本人留学生で卒業するのは十五人に一人の割合、またはそれ以下で、その最大の原因は英語力の欠落にあった。英語力がつかない一つの原因は「発音の問題」で、授業を聞いても発音がわからないから講義を聞いても内容が理解できず、話しても発音がおかしいのでわかってもらえない。それに加えて、単語力がないから読むのに時間がかかる。辞書を引く分だけ余計に時間がかかる。おまけに答案やレポートを書いても英語がメチャクチャということになる。せめて発音だけでもしっかり勉強しておけば、多くの留学生が途中で挫折せずに、鼻高々と帰国できたはずである。

 ハワイ大学留学中の二年半は大変つらい時期だったが、楽しい思い出も沢山ある。時間がたつにつれ、辛かったことや、不義理、みじめな思い、ひもじい思いは薄れてくる。これもまた人情というもの。本書では、読者に知られると恥ずかしい話は割愛させていただくことにした。

 卒業する最後の学期のことだが、どうしても二十一単位(七科目)取らないと卒業単位の百二十八単位にならない。二十一単位以上を取るには学部長の許可が必要で、学部長のところへ相談に行った。

「今学期で是非とも卒業したいので二十一単位取らせて下さい」

「留学生で二十一単位は無理だ」

「なんとか今学期で卒業したいので、お願いします」と、かさねてお願いすると、

「君の日本の大学での取得単位をもう一度見てみよう」

 と学部長が言い、結局一科目分、三単位を認めてもらうことになり、最後の学期は十八単位を取ることになった。

 いつもの学期より一科目多く取ったので、アルバイトをする時間はまったくなくなった。この学期のきびしさは、卒業後も一年に一回、真夜中に突然目がさめて、「この学期単位を落すと卒業できない。勉強しなければ」と思うことがあったくらいで、夜中に飛び起きるのは卒業後二、三年は続いた。

 この学期は最後まで残っていた社会学のクラスが大変で、四カ月の間に試験が四回もあり、成績もあまりよくなかった。期末試験が終了した時には「ひょっとしたらこの科目を落すかも知れない」と感じたので、試験終了後、ただちに教授の部屋に行き、今学期どうしても卒業したい旨教授に説明し、あまり出来がよくないので、今採点していただくようお願いした。

「君の成績はCとDの間ぐらいだ。Cマイナスというところだろう。留学生は語学のハンデーがあるから大変なことはよくわかっている。本来ならこういう○×式の試験はしたくないのだが、ひとクラス、百人も学生がいるとそうもいかない」とおっしゃる。マルチプル・チョイス(○×式)の試験は九十分で百問の問題を処理するのだが、これはきつい。一問につき答が三つから四つあり、読む量もかなりある。一問につき四十〜五十秒しかかけられない。

「私が日本へ留学をすることを考えると、君の苦しい立場もよくわかる。これから質問を三つするから、これらに出来るだけ答えてみなさい。答によっては点数を再考慮してあげよう」と教授が言うので、それに答えた。たまたま私が理解している分野の質問だったので、三つの質問にうまく答えられた。

「君の答から判断すると、社会学をよく理解していると思う。今までの成績に関係なくBをあげよう」と言われた時には小躍りした。教授の気が変らないうちにと、お礼もそこそこに部屋をとびだしていた。

 こういうこともあって、最後の学期はほどほどの成績で終了し、無事卒業することができたのである。


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