英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.60
著者 杉本 宣昭 
第六章 英語屋転業の記−ふたたび日本
サラリーマン廃業の記

 ある時、本社副社長のS氏をまじえて会議を開いた。主だったスタッフが参加しての会議で、営業の某氏が発言したことを、K氏が自分の都合のよいように通訳したので、私が「そうではない。彼はこう言ったのだ」と通訳し直すと、彼は「お前は毛唐のスパイか!」とどなるではないか。私も、とうとう毛唐のスパイにされてしまった。

 彼はある時S氏と口論をし、「やめる!」「やめろ!」ということになり、翌日、S氏の指示で総務から外部へK氏の辞任を通達した。S氏はその後すぐに帰国し、本社の了解を得たのだが、K氏は三井物産に泣きついて、三井物産に本社社長へテレックスで「K氏を辞めさせるなら、三井物産は即刻手を引くぞ」と圧力をかけさせ、見事に復帰してきた。数日後にだ。

 これには私も完全に参った。祝杯をみんなであげた後だったが、今度は私がやられる番になったのである。仕返しは全部私に集中した。私に心から味方した連中は悲しい思いをしなければならなかったのは言うまでもない。大変気の毒なことをしたと、今でも心苦しい。

 それからは事あるごとに「首を切るぞ」と、おどかされっぱなしであった。四年三ヵ月を過したCJ社であったが、とうとう辞任することになったのである。依願退職という「首切り」に会ったわけで、これをきっかけにサラリーマン稼業に終止符を打つ決心をすることになった。

 独立して小売業を始めたが、一年後には失敗、三軒のミニスーパーをたたんだ時には何千万円もドブに捨て、借財だけが残っていた。資本がなくてやれることは決っている。サラリーマンに戻るか、職人になるかである。

 結局、職人の道を歩み始めることになった。マーケティング・コンサルタントを始めたが、日本は無形のサービスにお金を払う慣習が欠けている国である。飯が食えるほどの料金はなかなか取れない。必然的に翻訳業のような、英語に関する仕事で生活することになった。

 ここに「英語屋さん」稼業が始まる。マーケティング・マン、特にグッド・マーケティング・マンは職人であると常々思っていた。良いマーケティング・マンは、完全主義者である。事業家ではない。企業の経営陣の一員ではあるが、自分のお金で経営しているわけではない。自分のお金で事業を営むのと、企業の経営陣の一員であるのとはおのずから異なる。

 英語屋さんはパーフェクショニストでなければならない。少なくとも私はそう信じている。また、職人はクリエイティヴでなければ、いい仕事は出来ない。マーケティング・マンにもクリエイティヴィティが要求される。英語屋さんもしかりである。


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