英語発音ならスギーズ! ◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世◆スギーズの英語人生、英語教材開発への情熱、ニューヨークでの生活の様子などをご一読下さい
◆ 連載小説 ☆ 我が英語渡世 ◆
VOL.62
著者 杉本 宣昭 
第六章 英語屋転業の記−ふたたび日本
英語ナレーター業を始める-2

 人の声の良し悪しは"お金"になるかならないかによってきまるとも言える。顔の良い奴は俳優になって稼ぎまくり、城達也のように声の良い人は声優としてお金がとれる。普通の声ではせいぜいカラオケバーでお金を払って無理矢理他の客に下手な歌を聞かせるのが関の山であろう。

 ビンの検査機に関するビデオの"音入れ"に新宿のさる録音スタジオに行った。録音終了後、そのスタジオの社長M氏が、

「大変いい声ですね。日本人がしゃべっているようには聞こえないし、発音も語尾がしっかりしていて、とても素人にはみえない。今度、うちの仕事もお願いできないか」

 と、言う。

 オーディヴィジュアルの専門家にそう言われて悪い気はしなかったが、まさか二週間後に仕事の依頼を本当に受けるとは思っていなかった。

 依頼された仕事はコカコーラの"地域対策"に関する約三十五分位のビデオプログラムで、男女のダイアローグとナレーションからなっている。

 M社長によると、NHKの英語のアナウンサーには、"アナウンサー節"という癖があってそれがなかなか抜けないらしく、アナウンサーにダイアローグをやらせるとうまく行かないと言う。

 結局、私とアメリカ人女性でダイアローグの部分をやり、NHKのアナウンサー某氏がナレーションの部分を受け持つことになった。

 この日本人のアナウンサーは英国風の英語を話す、バスのよくきいた良い声の持ち主で、年齢は私よりも三つ四つぐらいは上のように思われた。彼の声を先に録音したので、プロのナレーターぶりを拝聴すると、(ひょっとすると私の方がうまいかな)と思えるほどで、一緒に聞いていたアメリカ人女性のトニーも、私のほうがうまいと言う。これならナレーター稼業もやれるかなと、変に自信がついてしまった。

 ダイアローグの吹き込みはアフレコで、アフター・レコーディングの略だが、和製英語である。アフレコは登場人物の口の動きにシャベリを合わせる必要があり、初めてのことなので苦労した。

 アフレコは英語ではリップ・シンクという。在米中に時々日本映画のリップ・シンクを見たが、日本でやっているものと較べると大変下手で、口の動きと言葉がひどくちぐはぐだったのを覚えている。

 話は少々それるが、洋画の吹き替えも日本では役者不足なのか、画面の顔は変れど声は同じという場合が多く、最近は特に鼻につくようになった。刑事コロンボやコジャックの声優たちはあまりにも有名になり、彼等の声を聞くとすぐに分かる。

 吹き替えをしない字幕スーパー物を見るのが最近は楽しみになっているが、それもめったに見られない。あとで聞いた話しだが、NHKの教育テレビしか字幕スーパーの映画は上映できないことになっているという。音声多重装置を購入するのが一番よいのだが、持病の金欠病のためそれもままならない。

 英語のナレーションもこれを機会に何本もやることになった。吹き込みをするたびに、もう少しうまくやれたらと思うのだが、まだまだ役者不足。素人の域を脱し切れないでいる。


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