日本語のリズムは三拍子半
以前読んだ中津燎子氏の『再び、なんで英語をやるの?』という本の中で、彼女の友人ジェニーがめまいをおこす原因として、日本人のある種のゼスチャーがあるという。ジェニーがこう言っている。
「頭も、あごも、肩も、前後やら上下やらに動くでしょう?カクッ、カクッつてね。見てたら目が廻ってきてボーッとなっちゃうの。大きくとびはねていてくれたらいいけど、こきざみにカクン(、、、)、カクン(、、、)、カクン(、、、)、または、ガク(、、)、ガク(、、)、ガク(、、)、と動くのよね。最初はなんてマナーが悪いんだろうと呆れてたのよ」
「日本じゃ忠実にきいています、という態度のあらわれでいいマナーなのよねえ」
「私もそりゃ、わかったんだけど、めまいはちっともなおらないの。そのハイ(、、)、ハイ(、、)、ハイ(、、)、カク(、、)、カク(、、)、カク(、、)、で肯定だからわかってると思ってたらどうもそうじゃないんで、英語で念を押したら、イエス、イエスが六倍になっちゃって、もっと目まぐるしくなってしまって、結局わからないことは同じよ。そして私はくたくたなの……」
右の文中で、「カクン、カクン、カクン」や、「ハイ、ハイ、ハイ、カク、カク、カク」の箇所にぶつかった時、急にひらめいて、今までの疑問がパッと解けた、という気がした。
日本語として調子の良いリズムは三拍子なのだ。ハイ、ハイ、ハイ、カク、カク、カクというような三拍子だと気がついて、三拍子の例文を集めてみようと思って探し始めると、あるは、あるは……これぞ世紀の大発見、我が推測的中せりと、一人悦にいったほどである。
ある時ピアニストのNさんに話すと、「そりゃ、三拍子といってもワルツのリズムじゃないよ」という。
もっともだと思い、日本語の三拍子と私が考えるものは、お囃子(はやし)のリズムとか俳句のリズム(五・七・五)のような調子のことで、四拍子ではないし、厳密に言うと三拍子のワルツのリズムでもない。いわゆる四拍子と三拍子の中間のリズム「三拍子半」であると結論をだした。
「ハイ、ハイ、ハイ、カク、カク、カク」と三回ずつ続けると大変調子がいいが、「ハイ、ハイ、カク、カク」と二回ずつだと何んだかぶっきらぼうになってしまい、四回ずつ続けるともう日本語のリズムにならない。やっぱり三拍子半にするほうが一番いい。ここでは英語の四拍子に対して、日本語のリズムを「三拍子半」と呼ぶことにする。厳密にいえば、「三か四分の三拍子」とでも言ったほうがよいかも知れない。が、これでは長すぎるし、三拍子というとワルツのリズムと誤解されかねないので「三拍子半」と呼ぶことにしたのである。
日本語の表現には「三」という数字を使ったものが多い。ちょっと考えてみただけでも、かなりの数量をピックアップできる。次に「三(さん)」に関する表現や三拍子半のリズムの例をあげてみることにする。