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我輩も猫である
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・ナショナル・ディフェンス

■ここのところ新聞紙上でロシア原子力潜水艦クルスク(Kursk)の沈没(2000年八月二日)・救助に関する記事でにぎわっているが、センセイが "What do you think about the national defense of Japan? Are we doing a good job? What does 'national defense' really mean to us or, for that matter, to anybody else in the world?" 日本の国防とは「どういうことを意味するのか?」、それについて私がどう思っているのか、他の国の人にとって「国防」とはどういう意味を持つのかなどと質問するので、ちょっと考えてみたが、そう簡単に答えが出せるようなことでもないと思った。"As far as the Russia's armed forces are concerned, the are all screwed up. They just don't have enough money to maintain their military force. They don't even have money to pay their soldiers." ロシア軍はとにかくメチャクチャで、お金がないので、兵隊の給料まで支払っていない。軍人が給料をもらえなくなると、どうなるか?周りにあるもので金目のものを売り飛ばして生活費に当てなければならなくなる。兵も将校も同様である。将校でも勤務をサボってタクシーの運転手などのアルバイトしなければ女房子供を食べさせられないのである。士気は地に堕ち、軍の体をなさなくなる。軍をアノミー(anomie, 人々の日々の行動を秩序付ける共通の価値・道徳が失われて無規範と混乱が支配的になった社会の状態。デュルケムの用語)が覆ってしまった状態だが、何でも起こりえる。今回の原潜事故もその結果だろう。日本人は「国防」とか「軍事」、「軍隊」のことに関して、あまりにも知らなすぎると私が言うと、"You're damned right!"(全くその通りだ)とセンセイも言う。

■"You know, Charlie, Japanese totally lack the knowledge of defense or military. Just because we lost the last war the winning side very successfully made us think that we're the bad guys like the American Indians in the old western movies. The Americans are the good guys." 先の大戦で負けたからと言う理由だけで、我々が西部劇のインデアンのような「悪者・悪玉」で、アメリカ人は「偉ら者・善玉」なのだと思わせるのに戦勝側は大成功した。「我々が悪うございました。こんなことは二度とやりません。戦うことは悪です。チャイナやロシアや北朝鮮はいつでも日本を攻めることが出来る戦力を持ってもいいが、日本は戦力と名のつくものは、マッカーサーに作ってもらった憲法で決められているから、絶対に持ってはいけないんだ」と一億総懺悔をやりはじめて50年もたつのだと、センセイ、大いに嘆くのである。あのマッカーサー元帥でも、退役後、米国上院で「日本が行ったのは、防衛のための戦争だった」と証言したぐらいだから、あの戦争は、相手に仕掛けられた戦いを、やむなく行っただけで、侵略の意図などほとんどなかったのであると。東南アジアへ軍を送ったのも、アメリカ、イギリス、オランダや、フランスと戦い、現在のインドネシア、マレーシャ、ベトナム、フィリピン(これらは今では独立国だが、当時は英米仏蘭の植民地だから、日本が攻めたのは今の独立した国々ではない)で彼らが生産していた石油(日本への禁輸協定を結んでいた)などを獲得しようとしたのである。英米仏蘭の植民地(宗主国の所有物)に住んでいる人たちと戦争しようとしたのではない。ましてや、日本が白人たちを追い出して、彼らに取って代わって、そこの住民を支配しようなどとは全く思っていなかった。日本は、彼らを英米仏蘭の支配から解放して、独立させることを目的としたのである。

■"I won't say we had nothing but good intentions. The natives in this area were never regarded as our enemies except the Chinese and the Philippine guerillas. The Chinese 'kakyo' were the only ones fought against the Japanese forces in the South East Asia."我々は白人国の植民地に住む住人たちと戦争をしたのではない。イギリスの植民地経営の手先だった華僑とフィリピンのゲリラだけは別で、日本軍と戦ったが、国家としてまとまって戦ったのではないし、歴史に残るような戦果があったわけでもない。華僑のチャイニーズは、白人たちの買弁(comprador)として、現地住民を搾取することに手を貸していたので、地元の人たちからは、大変嫌われていたのだとセンセイは言う。

■センセイは大東亜戦争がはじまったころの生まれだから、いわゆる戦中派ではない。唯、満州で生まれ、敗戦から一年後の夏(summer 1946)に帰国したのだと言うから、多少、戦争体験はあるが、5歳前後までの経験だから、3〜4カットの写真のような記憶はあるが、ほとんどのことは覚えていないと言う。ここ10年くらい、チャイナに残された戦災孤児のことがテレビンなどで報道されているが、センセイも、「運が悪ければ今頃テレビに出ていたか知れない。俺は本当にラッキーだったんだ」と言っている。

■アメリカ(マッカーサー)の日本国民に対して行った "brainwashing"(洗脳)は強烈で、日本人の「玉抜き」が徹底的に行われた。アメリカ人が最も恐れたのは「日本人の復讐心」で、「次の戦争では必ずアメリカに勝つぞ」と思わせないようにすることが最優先された。言論統制(censorship)が徹底的に行われ、あの戦争を正当化(justify)するような発言や出版物は、厳しく取り締まられ、ラジオの番組などを通して「いかに日本が間違っていたか」とか、「戦前の日本を完璧に否定するような物の考え方」を全国民に宣撫(inculcate, 繰り返し教え込む)したのだ。だから、中学校の先生でも、生徒の前で、天皇陛下のことを「テンちゃん、テンちゃん」と平気で呼んだりしていたとセンセイが言う。戦前は、天皇制を含めて、すべてが間違っていたと言うのだ。天皇を「陛下」と称したりするだけで、非平和主義者、軍国主義者などとののしられたのだそうだ。

■しかし、センセイは中学生のころでも、すでに軍備・国防に関して興味を持っていたらしく、小説などでも戦争物、兵隊物をよく読んだらしく、階級名・階級章に関する知識をそのころから持っていたと言う。大学に入って米兵(GI)や米軍関係(特に従軍牧師たち)との付き合いがはじまると、英語の軍隊用語も沢山おぼえ、英語の小説も戦争物をよく読んだと言う。だから、素人としては、軍事関係の知識はかなりのレベルだったらしいのだ。

■山本七平氏の「ある異常体験者の偏見」という本で、七平氏自身の軍隊経験から得たすばらしい洞察(insight)が示されている。旧陸軍の兵員数は、最盛時で700万だったと言う。当時の人口の一割、今なら1200万人以上に相当すると言う。いかにお金がかかったか想像してみるといい。現在の日本の陸軍(陸上自衛隊と日本では呼ぶが、英語では Army = 陸軍である)は15万人、米国は200万人弱、チャイナは約300万人、北朝鮮は約100万人、ロシアも100万人以上である。700万人というと、持たせる鉄砲の数が足りなくて、銃も持たされない兵隊が沢山いたということで、これじゃあ、戦争に勝てるわけがない。そのぐらいは猫にも分かる。日本軍の兵器・車両・戦車は旧式のものが多く、不良品も多かったらしい。戦闘機(ゼロ戦のような)や軍艦などには一流のものもあったが、とにかく日本軍は「無い無い尽くし」だったらしい。無条件降伏当時(軍は無条件降伏したが、日本国自体は、条件をつけて降伏した)、戦爆特攻機などが約1000機あったらしいが、すでに燃料はゼロだったと言う。